統合失調症では、一度落ち着いたあとに症状が再び悪化することがあります。このときよく使われる言葉が「再燃」と「再発」です。似ている言葉ですが、医学的には意味が少し異なります。また、「新しい症状が出た場合は再発なのか?」と疑問に思う人も多いですが、必ずしもそうではありません。ここでは再燃と再発の違い、そして新たな症状が出た場合の考え方を具体的に説明します。
①再燃とは(まだ治りきっていない状態での悪化・発症)
再燃とは、症状が完全には消えていない状態で再び悪化することを指します。
症状が軽く残っている状態で安定していたものが、ストレスや睡眠不足などをきっかけに再び強くなるケースです。
例えば次のような流れです。
不安感が少し残っていて、幻聴も減ってはいるものの完全には消えていない状態で、日常生活はなんとか送れているとします。このように症状が軽く残ったまま安定している時期があります。
その状態で、仕事や人間関係のストレスが増えたり、睡眠時間が短くなったり、生活リズムが崩れたりすると、徐々に状態が悪化していきます。すると、これまで減っていた幻聴が再び増えたり、周囲の人に悪く思われているのではないかという被害的な考えが強くなったり、集中力が落ちて物事を考えるのが難しくなったりします。
このように、完全に回復していない状態から症状が再び強くなる場合は「再燃」と考えられます。火が完全に消えていない状態で、再び燃え上がるイメージです。
②再発とは(一度落ち着いた後に新たに発症)
再発とは、症状がほぼ消失して安定した期間が続いたあとに、再び症状が出現することを指します。
例えば、以前は幻聴や妄想があったものの、治療によってそれらの症状がほとんどなくなり、日常生活も問題なく送れる状態になります。仕事や家事ができるようになり、周囲との会話も自然にできるようになり、数ヶ月以上安定した状態が続いている場合です。
しかし、そのような安定した状態が続いたあとに、再び誰もいないのに声が聞こえるようになったり、周囲の人に監視されていると感じたり、考えがまとまらず会話が難しくなったりすることがあります。このように、一度落ち着いていた状態から新たに症状が出てきた場合は「再発」と呼ばれます。
一度消えた火が再びつくイメージです。
③新しい症状が出た場合は再発?
結論から言うと、新しい症状が出たからといって再発とは限りません。再燃の段階でも、新しい症状が加わることはよくあります。
例えば、最初の発症では不安が強くなり、人に見られているような被害的な考えが中心だったとします。その後、治療によって症状は軽くなり、日常生活は送れるようになったものの、不安感が少し残っている状態が続いていたとします。このような回復途中の状態で、ある時から誰もいないのに声が聞こえるようになったり、物音に過敏になったりすることがあります。この場合は新しい症状が出ていますが、完全に安定していたわけではないため、再燃と判断されることが多いです。
一方で、症状がほぼ消えて通常の生活を問題なく送れており、その状態が数ヶ月以上続いていたとします。その後、突然誰かに監視されているという強い妄想が出てきたり、現実との区別がつきにくくなったりした場合は、再発と考えられます。この場合は一度安定した状態が続いたあとに、新たに症状が出現しているためです。
このように、新しい症状が出たかどうかだけでは再燃か再発かは判断できません。症状が出る前に、どの程度安定した期間があったのかが重要な判断のポイントになります。
④再燃と再発の違い(まとめ)
再燃
完全に回復していない状態で起こります。症状が軽く残っている中で、ストレスや体調の変化などをきっかけに悪化します。また、以前にはなかった新しい症状が追加されることもあります。
再発
症状がほぼ消失し、安定した期間が続いたあとに起こります。しばらく問題なく過ごせていた状態から、再び新たな症状が出現するのが特徴です。
⑤臨床的には再燃の方が多い
統合失調症では、症状が完全にゼロになるよりも、軽い症状を残しながら安定することが多いとされています。そのため、実際の臨床では再発よりも再燃として扱われるケースの方が多いといわれています。
また再燃の前には、体調や考え方に少しずつ変化が現れることがあります。例えば、これまで気にならなかった生活音や人の話し声が強く感じられ、音に敏感になることがあります。また理由のはっきりしない不安が増えたり、落ち着かない気持ちが続いたりすることもあります。さらに寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりして睡眠が不安定になる場合もあります。
そのほかにも、集中力が続かず本やテレビの内容が頭に入りにくくなったり、少しの作業でも疲れやすくなったりすることがあります。また考えがまとまりにくくなり、何をしようとしていたのか分からなくなる、会話の途中で話の流れを見失うといった変化が出ることもあります。
このような変化は再燃の前触れとして現れることがあり、早めに気づくことで悪化を防ぐきっかけになるとされています。
参考文献
日本精神神経学会. 統合失調症薬物治療ガイドライン
American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR)
World Health Organization. Schizophrenia Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines
Kaplan & Sadock’s Synopsis of Psychiatry, 12th Edition
厚生労働省 e-ヘルスネット 統合失調症の基礎知識


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