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人口は変動し続けている|時代も変化し続けている|なぜいつの時代も『統合失調症は世界中で約1%』存在し続けるのか?|進化精神医学論文から

『統合失調症関連記事』

こんにちは!統合失調症歴13年目の大地です!(/・ω・)/
統合失調症は、世界中でおよそ100人に1人、約1%の人が発症するといわれています。
この数字を聞いて、皆さんはどう感じるでしょうか。

実は、この「約1%」という数字は、精神医学や進化生物学の研究者たちを約100年前から悩ませてきた大きな謎でもあります。

もし統合失調症に関わる遺伝的な特徴が、人が生きて子孫を残すうえで不利なものだけだったとしたら、長い進化の過程で少しずつ減っていっても不思議ではありません。

それなのに、なぜ今もなお、世界中で約1%という割合を保ち続けているのでしょうか?
「統合失調症は遺伝する」そう聞いたことがある人は多いかもしれません。では、統合失調症は本当に「遺伝だけ」で決まる病気なのでしょうか?

こうした疑問に対して、近年の研究は少しずつ新しい答えを示し始めています。
そして、近年では「創造性との関係」や、「IT社会になったことで統合失調症の現れ方が変化しているのではないか」という考え方も議論されています。

今回は、「なぜ統合失調症は約1%という頻度で存在し続けているのか」という問いを入り口に、遺伝・環境・進化という視点から、現在どのようなことが分かってきているのかをご紹介します!!

1. なぜ統合失調症はなくならないのか?「統合失調症パラドックス」

統合失調症は、世界中でおよそ100人に1人が発症するとされる精神疾患です。しかし、この病気には昔から大きな疑問がありました。

それは、「統合失調症は子どもを持つ割合が低いとされているにもかかわらず、なぜ世界中で約1%という頻度を維持し続けているのか」という疑問です。この現象は「統合失調症パラドックス」と呼ばれています。

もし統合失調症に関係する遺伝子が生存や子孫を残すうえで不利なものだけであれば、長い進化の過程で少しずつ減っていくはずです。しかし実際には、国や民族が違っても発症率は大きく変わらず、およそ1%前後で推移しています。

この疑問に対して、1964年に進化生物学者や精神科医らが発表した論文では、「統合失調症に関わる遺伝的な特徴には、不利な面だけではなく、進化の過程で何らかの利点もあった可能性がある」という考え方が提案されました。

当時は、感染症への抵抗力や外傷への強さなどがその例として挙げられていました。また、創造性や高い知性といった特性についても関連する可能性が議論されていましたが、これらは当時の仮説であり、現在でも確立した事実ではありません。

その後の研究によって、この考え方は少し修正されています。現在では、「統合失調症遺伝子」と呼べるような単一の原因遺伝子は見つかっておらず、多数の遺伝子が少しずつ影響し合うことで発症リスクが高まると考えられています。また、遺伝的な素因があっても、多くの人は一生発症しません。つまり、遺伝だけで病気が決まるわけではなく、環境要因も重要な役割を果たしていることが分かってきました。

つまり、「統合失調症パラドックス」は現在でも完全に解決されたわけではありません。しかし、この疑問をきっかけに進化精神医学や遺伝学の研究が大きく発展し、「なぜ統合失調症は存在し続けるのか」という問いは、「遺伝」と「環境」の両方を考える新しい研究へとつながっています。

そして近年、その答えに近づく重要な手がかりとして注目されているのが、「多遺伝子リスクスコア(PRS)」と呼ばれる研究です。次の章では、この最新の研究について詳しくご紹介します。

2. 最新研究で分かってきた「遺伝×環境」の関係

近年、統合失調症の研究で特に注目されているのが、「多遺伝子リスクスコア(Polygenic Risk Score:PRS)」です。

名前だけ聞くと難しく感じますが、簡単に言えば「統合失調症に関連すると考えられている遺伝子をどのくらい持っているか」を数値化したものです。

以前は、「統合失調症には原因となる特定の遺伝子があるのではないか」と考えられていました。しかし現在では、そのような単一の原因遺伝子は見つかっていません。代わりに、発症に関係する多数の遺伝子が少しずつ影響し合っていることが分かっています。つまり、遺伝的なリスクは「ある・ない」ではなく、「高い・低い」という連続したものだと考えられるようになりました。

では、遺伝的なリスクが高ければ必ず統合失調症を発症するのでしょうか。

答えは「いいえ」です。

この論文で紹介されている研究では、統合失調症患者だけでなく、その兄弟姉妹や健康な人も対象に調査が行われました。その結果、発症していなくても、統合失調症の遺伝的リスクが比較的高い人は少なくありませんでした。

つまり、遺伝的な素因を持っていることと、実際に病気を発症することは同じではないということです。

そこで研究者たちは、「では何が発症のきっかけになるのか」という疑問についても調べました。

その結果、発症リスクを高める環境要因として、幼少期のつらい体験、都市部での生活、移民として暮らすこと、少数派として生活すること、大麻の使用、聴覚障害、低出生体重など、さまざまな要因が関係していることが示されました。論文では、これらをまとめて「統合失調症促進性環境曝露(Exposome Score:ES-SCZ)」と呼んでいます。

そして、重要なことが遺伝と環境は別々に働くのではなく、お互いに影響し合っている可能性が示されたことです。

例えば、遺伝的なリスクが高い人ほど、幼少期の逆境体験などの環境要因が重なることで発症リスクがさらに高くなることが報告されています。一方で、環境要因が少なければ、遺伝的な素因があっても発症しない人は数多く存在します。

これは、「遺伝か環境か」という二者択一ではなく、「遺伝と環境の相互作用」が重要であることを示しています。

著者は、この考え方を「二重らせんから三重らせんへ」という言葉で表現しています。これまで遺伝子が重視されてきた研究に、環境というもう一つの重要な要素を加えることで、統合失調症をより正確に理解できるようになってきたという意味です。

もちろん、今回紹介された研究から、「この環境に置かれたら必ず統合失調症になる」と結論づけることはできません。また、「遺伝的リスクが高いから将来発症する」と予測できるわけでもありません。

しかし、これらの研究は、統合失調症が決して「遺伝だけ」で決まる病気ではなく、生活環境や社会環境も大きく関わることを強く示しています。

つまり、遺伝子はあくまで「発症しやすさ」を表す一つの要素に過ぎず、実際に発症するかどうかは、その後の人生で経験するさまざまな環境と複雑に影響し合って決まる可能性が高いということです。

このような考え方は、統合失調症を「運命として決まっている病気」と捉えるのではなく、予防や早期支援の可能性を考えるうえでも、とても重要な視点と言えるでしょう。

3. 創造性と統合失調症には関係があるのか?

統合失調症について調べていると、「芸術家や作家には統合失調症の人が多い」「創造性と関係がある」といった話を耳にすることがあります。

では、本当に創造性と統合失調症には関係があるのでしょうか。

この論文では、多遺伝子リスクスコア(PRS)を用いて、この疑問を調べた研究も紹介されています。研究では、音楽家や画家、作家、俳優など創造的な職業の人たちと、統合失調症や双極性障害の患者を比較し、それぞれの遺伝的リスクを調査しました。

その結果、創造的な職業に就いている人は、一般の人よりも統合失調症や双極性障害に関連する遺伝的リスクがやや高い傾向がみられました。一方で、創造的な人が精神疾患を発症しているわけではないことも明らかになりました。

つまり、「創造性がある人は統合失調症になる」ということでも、「統合失調症だから創造性が高い」ということでもありません。

この研究が示しているのは、創造性と統合失調症には、共通する遺伝的な背景が一部存在する可能性があるということです。しかし、その遺伝的な特徴を持っていても、多くの人は病気を発症することなく生活しています。

また、論文では「魔術的思考」と呼ばれる特徴についても紹介されています。これは、テレパシーや第六感、神秘的な体験を信じやすい傾向などを指します。このような特徴を持つ人は、統合失調症を発症していなくても、多遺伝子リスクスコア(PRS)が比較的高い傾向がみられたという研究結果も報告されています。

これだけで「第六感を信じる人は統合失調症になりやすい」と結論づけることはできませんし、こうした特徴は健康な人にも広くみられるため、研究もあくまで統計的な関連を示したものです。

これらの事から、近年の研究から見えてきたのは、統合失調症は「健康」と「病気」が完全に分かれているものではなく、その間にさまざまな特性が連続的に存在している可能性があるということです。

こうした考え方は、統合失調症を単なる「異常」として捉えるのではなく、人間の多様性の一部として理解しようとする、近年の研究の流れとも一致しています。

4. IT社会は統合失調症を変えたのか?―著者が提唱する「良性の転態」

ここからは、この論文で最も興味深いテーマをご紹介します。

それは、「社会の変化によって、統合失調症の現れ方そのものが変化しているのではないか」という考え方です。

著者は近年、日本をはじめとする先進国では統合失調症の発症率や重症例が減少し、症状も以前より軽症化している可能性があると述べています。そして、この変化を「良性の転態(benign metamorphosis)」と表現しています。

もちろん、これは現時点で完全に証明された事実ではありません。論文でも、診断されていない人が存在する可能性などに触れられており、慎重な解釈が必要だとされています。

では、なぜ著者はこのように考えているのでしょうか。

その理由の一つとして挙げているのが、IT社会の発展です。

インターネットやSNSの普及によって、人と直接会わなくても交流したり、自分の考えを発信したりできるようになりました。また、オンラインで仕事をする人も増え、多様な働き方や生き方が社会に受け入れられるようになっています。

著者は、このような社会の変化によって、以前であれば大きなストレスとなっていた環境が変わり、統合失調症のリスクを持つ人でも生活しやすくなった可能性があると考えています。さらに、精神医療の進歩や早期発見・早期支援の充実も、重症化を防ぐ要因の一つとして挙げています。

一方で、この傾向は世界共通ではありません。

論文では、発展途上国で都市化や近代化が進んでいる地域や、途上国から先進国へ移住した人では、統合失調症の発症リスクが高まる可能性についても紹介されています。著者は、急激な環境の変化が遺伝的な素因と重なることで、発症につながる可能性があると考察しています。

つまり著者は、統合失調症は時代や社会から切り離された病気ではなく、人類の生活環境や文化の変化とともに、その現れ方も変化してきた可能性があると考えているのです。

この考え方が正しいかどうかは、今後さらに多くの研究によって検証される必要があります。しかし、「遺伝だけではなく、社会や環境も病気に影響を与える」という視点は、近年の研究とも共通しており、統合失調症を理解するうえで重要な考え方の一つと言えるでしょう。

まとめ

統合失調症は、世界中でおよそ100人に1人、約1%の人が発症するとされる精神疾患です。この「約1%」という割合は、国や地域が違っても大きく変わらず、長年にわたって研究者たちの大きな疑問となってきました。

もし統合失調症に関わる遺伝子が不利益しかもたらさないのであれば、進化の過程で少しずつ減っていくはずです。それにもかかわらず、なぜ現在でも約1%という頻度を維持しているのでしょうか。

今回ご紹介した論文では、この問いに対して、進化精神医学という視点から一つの考え方が示されています。

近年の研究では、統合失調症は一つの遺伝子で決まる病気ではなく、多くの遺伝子が少しずつ影響し合い、さらに幼少期の体験や生活環境、社会環境などが複雑に関わることで発症すると考えられるようになってきました。また、創造性との関連や、IT社会・多様な働き方の広がりによって、統合失調症の現れ方そのものが変化している可能性についても議論されています。

もちろん、IT社会による「良性の転態」などは、著者による進化精神医学的な考察であり、今後さらに検証が必要な仮説です。しかし、「遺伝だけ」「環境だけ」という単純な考え方では説明できないことが、最新の研究から少しずつ見えてきています。

なぜ統合失調症は約1%という頻度で存在し続けているのか。

約100年前からあるこの問いには、まだ明確な答えはありません。(この問いにおいて、現時点では絶対という言葉は当てはまらないです)

しかし、その答えに近づくための研究は着実に進んでいます。そして、統合失調症を「異常」として捉えるのではなく、人間の多様性や進化、そして社会との関わりの中で理解しようとする視点は、これからの研究においてますます重要になっていくのではないでしょうか!

参考文献

最後に|免責事項・注意書き

本ブログで発信している内容は、あくまで僕個人の体験談や調べた記録に基づいたものです。統合失調症の症状や療養プロセスは人それぞれ異なるため、すべての当事者の方に必ずしも当てはまるわけではありません。

症状や治療について詳しく知りたいこと、不安なことがあれば、必ずご自身の主治医の先生にご相談ください。

  • 僕へのご連絡について: これまでSNS上などで、多くの方の相談に乗らせていただいた実績があります。もし僕に話を聞いてほしいことや、共有したいことがあれば、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください!
    ただし、僕は医療従事者ではないため、専門的な治療の判断や、お体の責任を負うようなカウンセリングは致しかねます。あくまで「統合失調症歴13年目の統合失調症経験者」として、お話をお伺いする形になりますので、その点だけご了承いただけますと幸いです(僕個人では対応しきれない重いお悩みなどの場合は、主治医や専門機関へのご相談をお勧めすることがあります)。
  • 専門的な情報をお求めの方へ: 統合失調症に関する、より専門的で正確な情報が必要な場合は、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などの専門機関のホームページを参考にされることを強くお勧めします。

専門的な情報を確認した上で、気になる点はぜひ主治医の先生に質問してみてくださいね。

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